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Journal of The Robotics Society of Japan (ISSN: 0289-1824)

PublisherThe Robotics Society of Japan

ISSN-L0289-1824

ISSN0289-1824

E-ISSN1884-7145

IF(Impact Factor)2025 Evaluation Pending

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Description

ロボット学が初めて経験した大規模自然災害が1995年の阪神淡路大震災であり,同じ年の地下鉄サリン事件は我々が経験した初めてのテロによる人為災害である.これらの災害における大被害や安全・安心に関する信頼の失墜から,災害対応に対する様々な課題が浮き彫りになった.これらの苦い経験から,2002年に文部科学省が大都市大震災軽減化特別プロジェクトを開始させ,その後も多くのレスキューロボットシステムが開発されてきた.しかし,2011年3月11日に宮城沖の大地震が日本を襲い,広範囲に渡って大きな被害をもたらした.この東日本大震災は,地震動による被害だけでなく,その30分から1時間後に海岸部を襲った40 mを超える津波,さらには津波の影響ですべての電源を失って最悪のメルトダウン・水素爆発を起こした福島第一原子力発電所の事故などが複雑に絡み合った大規模な複合災害である.再び起こってしまった大災害に対して,ロボット学という学問分野にも大きな課題が突きつけられた.その課題は,深層的には日本人のリスク管理の問題,つまりは生き方にまで及んでおり,研究者・技術者としての,モラルとモチベーションの持ち方にも変容が求められている.2012年に30周年を迎えた本学会は,高機能化・複雑化する社会の諸課題を解決するために,ロボット学における叡智を結集し,新時代を開拓する研究者・技術者間の相互交流を活発化させることを目標として,その活動を活性化し,その規模を拡大してきた.今回の東日本大震災では,人が立ち入ることが不可能な極限環境での作業遂行の有力なソリューションとしてロボット技術の必要性が炙り出されたのではないだろうか.これには,単に目先の問題を解決するための短期的な研究開発だけでなく,次世代へも引き継がなければならない本質的な問題に長期的な視野で取り組むことが必要とされている.
 こういった背景から,今回の震災で,何が原因で,何が起きていて,どのような結末をもたらしているのかを考え,沢山のかけがえのない人や物を失った,この悲惨な経験から何を学び,どのように世界の貴重な教訓として活かし,引き続き世界各地で発生している災害に対して,ロボット学がいかに備えていくべきかを議論することを目的として,本特集号を編むことになった.会誌編集委員会では伊藤一之委員(法政大学),中坊嘉宏委員(産業技術研究所),藤田淳委員(三菱重工業),大賀淳一郎委員(東芝)と筆者が本特集号を担当することになった.企画段階で本テーマの重要性から,本特集号を震災対応 レスキューロボットの活動を振り返って?,?として2号に渡って記事を掲載することとした.特集号?では,今回の震災対応を俯瞰的な視点でまとめ,今後に受け継ぐ記録とするとともに,研究者としての責任の重さや,学会として目指すべき姿などを提言としてまとめることを目標とした.また,特集号?では,大学の研究者のみならず,できるだけ多くの企業の方にも執筆を依頼し,今も続く災害対応の取り組みを紹介する予定である.特に,第一線でご尽力いただいている皆様の努力に光をあてることで,その努力に報いることができるようになればと考えている.
 特集号?では,大道武生氏(名城大学)に東日本大震災におけるロボットの活動について原子力関係記録作成分科会の活動をもとに原発対応を中心に,大須賀公一氏(大阪大学)に東日本大震災におけるロボットの活動について災害関係記録作成分科会の活動をもとに原発以外の災害対応を中心にご執筆いただいている.さらに,吉野伸氏(東京電力)には東京電力をはじめとする原子力発電所を運営する側から見たロボットの活動について,川妻伸二氏(JAEA)には海外との比較を交えて原発対応におけるロボットの準備状況や運用体制などについて,眞峯隆義氏(JST)らには災害発生直後の活動を支援するJ-RAPIDプロジェクトについて設置目的や現状の活動などについて,淺間一氏(東京大学,産業競争力懇談会PL)には全体のまとめとして産学全体としての取り組みの記録や今後の在り方について,また,そのなかで,ロボット学会が担うべき責任や展望などについてご執筆いただいている.
 福島原発の廃炉には30年から40年の時間を要すると言われており,この重大な課題を次世代へ引き継がなければならない.本特集号が様々な貴重な情報の記録となり,東日本大震災の災害対応だけでなく,今後世界中で起こり得る災害に対応できるシステム構築への重要なヒントになり,本学会がこの分野に大きく貢献することができるようになることを期待したい.
 最後にお忙しいところ,執筆をお引き受けいただき貴重な記事をご寄稿いただいた著者の皆様,印刷所への入稿の締め切り直前まで作業をしていただいた事務局の高橋明子氏に感謝申し上げる.

Last modified: 2014-02-24 16:32:16

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